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【平戸市で自分らしく生きる】 実際に移住した人が語る成功法則とは?

平戸での仕事についてまとめたvol.2はこちらから

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2015年秋、京都から長崎県平戸市に移住をしてきた吉田佑介さん、綾子さん夫婦。過去2回の記事では、移住のきっかけ(vol.1の記事参照)、平戸での仕事(vol.2の記事参照)についてお聞きしました。今回は、平戸の住まいや地域コミュニティとのかかわりについて迫ります。

壁に穴や崩れた天井 ボロボロの空き家を改修

吉田さん夫婦は2歳のお子さんの子育てをしながら、佑介さんはシーカヤックのガイドやわな猟によるイノシシの駆除、農家の手伝いなどをしている。そして、春先のゲストハウス開業に向けて、離れの改築や宿のHP作成など、ふたりで準備に奮闘中だ。

さて、ふたりはどんな家に住んでいるのだろうか。移住した直後は、平戸にUターンした友人の実家の隣家を借りていたが、現在の住まいは、平戸市の空き家バンクに登録されていた物件に引っ越して住んでいる。

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長らく空き家だったので傷みがひどかった 写真提供:山彦舎

「今の家は壁に穴があったり、天井が崩れていたり、空き家になって長かったため、かなりボロボロの状態でした。外の壁に隙間があって、部屋の中からキラキラと陽の光が見えたんです。そのなかで彼はテントを張って、改築を進めながらひとりで生活していました。
私は子どもがまだ小さかったので、間借りしている家で冬は過ごしていました。彼はもともとひとりで雪山に行っちゃうような人ですから、そんな生活も楽しかったみたい」(綾子さん)

雪山と比べれば屋根も壁もあるし快適だったと佑介さんは笑いながら振り返る。

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改修中の佑介さんの寝床。家の中に張ったテントで生活 写真提供:山彦舎

「少しずつ修繕を進めて、いちばん寒い時期に外壁の張り替えをしたのですが、びょうびょうと風がすごくて。平戸に前代未聞の大寒波が来て、雪が降ったんです。わたしたち、京都の美山(編注:京都府南丹市美山町)という雪国から来て、せっかく南国に来たと思ったのに、そんなありさまで(笑)」(綾子さん)

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少しずつ手を加え、3年程度で一通り改修が終わる見込みだ 写真提供:山彦舎

外壁を張り替えたり、天井を繕ったり、壁を塗ったり、働きながら少しずつ進めているので、家の修繕は3年くらいかかる見込みだ。ちなみに物件は、5LDKの母屋に、離れ、納屋、駐車場。畑がついて、家賃は月額1万円(!)。

「都会で考えたら、こんなに広い家に住むのは夢のまた夢」と佑介さん。これも地方ならではの魅力。土間に置かれた薪ストーブからパチパチと木がはぜる音が聞こえてくる。柔らかい暖かさに、犬や猫も近くに寄ってきて、リラックスした表情を見せていた。

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畳を張り替えたり、建具を変えたり、1年ちょっとでようやくここまで来た。

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セルフビルドで少しずつ改築を進めている母屋。こちらはリビング。

吉田さん夫婦が暮らすのは住民同士の結びつきが深い、平戸島の根獅子地区

「生活していて感じることは、神事、行事ごとが多いことかな。平戸のなかでも目立って多いのではないでしょうか。だから付き合いが密です。でも、根獅子だから平戸だからといって特殊ということではなくで、近所付き合いの濃さは、どの田舎に行ってもあると思います。同じ活動を一緒にしてお互いを知る。それが信用につながっていくんですよね」(綾子さん)

地域へはどういうふうにとけこんでいったのか

移住を考える際に、地域の方々とうまくとけ込めるか不安に思う人がほとんど。そういった不安はなかったのだろうか。

「もともと平戸に友人がいたというのが大きいですかね。彼を介して、地元の方とも移住者の方とも、いろいろな世代の方とつながることができました」(佑介さん)

平戸市が本格的に移住促進に力を入れだしたのは2015年から。その成果もあり、少しずつ移住者が集まってきているという。

「いま仲間と集まると意外とUターンよりIターンのほうが多いと思います」(佑介さん)

漠然としたイメージとしては、地方のコミュニティというと、付き合いが濃く、やや閉鎖的というイメージも。でも自分たちの周囲でいえば平戸は違う、と綾子さんは感じている。

「仲間がお互いを尊重し合っていて平和で、それがとてもよいと彼は思ったし、私もそう思います。地域の方たちとの世代間の交流もしやすいです。平戸の風土はオープンだと感じます。歴史的に、昔から開けた場所だったからかもしれませんね」

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ご近所さんから野菜をもらうなど、日常的な付き合いがある

海洋交易で栄えた平戸はオープンな気質

九州の西の端にある平戸島。古来から海洋交易の拠点として、さまざまな文化や人が行き来してきた影響もあり、島にありがちな閉鎖的な雰囲気はない。また、平戸は島といっても、本土から近く、1977年に平戸大橋ができたことで交通の便がよくなり、これまで以上に開けてきているのだ。

「平戸島は大きいので、北部から南部までコミュニティもカラーも多様です。私たちの周囲で移住してきた人はものづくりをしている人、それを目指している人が多いですね。それぞれ職業は違うけれど助け合いながらゆるやかにつながっています。これからの平戸を少しずつ面白くしていきたいという気持ちを持って活動しています」(綾子さん)

しかし、オープンなコミュニティといっても、接し方や姿勢には注意が必要。京都・美山での暮らし、そして現在の平戸での暮らしのなかで感じたことがあると言う。

「土地の人たちよりも前に出ようと思わないことです。そして挨拶は基本中の基本。がむしゃらに前に出ようとしなくても、こつこつ毎日働いて暮らしていれば、地域の方々は必ず見ていてくれますから。
それに働き者が好き。平戸の人って働き者が多いんですよ。見ていてくれることは緊張感につながります。真面目にこつこつ働いていれば、前に出ようとしなくても背中を押してくれるんです。だから、移住者がすぐに何かを変えようとは思わないこと」(綾子さん)

地域をよくしたい、盛り上げたいという熱い想いは大事だが、まずは地域に根ざすこと。その土地の暮らしを尊重すること、それが移住者の心得のようだ。地に足つけて真面目に暮らし、やりたいことがあればその思いを胸に秘めてちょっとだけ出す。それだけでも見ていてくれる人はいるし、一度、信用してもらうとそれはコミュニティのなかで連鎖していくものだとか。

移住者と地元の人で摩擦はあるの?

地域おこし協力隊や移住者と、地元の人の間で摩擦が起こっているという問題も耳にする。京都の美山、長崎の平戸と2つの地域で田舎暮らしを経験している吉田さん夫婦はどう感じているのだろうか。実際、移住者と地元の人たちとの間で問題が起こるのを目にしたことがあるという。

「移住者は得てして“自分が変えなきゃ”と強く思いすぎてしまう。代々その土地を守って暮らしてきた人たちの気持ちを考えられない部分もあると思うんです。
地元の人たちは地域のなかのしがらみというか、さまざまな関わりのなかで生きているので、軽々しくものを動かせない。だから、来たばかりの移住者が“何か変えてやろう”というのはおこがましいのかもしれません。なので、あまり前に出すぎないほうがいいように感じます」(綾子さん)

移住者はその土地の歴史のなかでは新参者。何世代にもわたって暮らしている人たちが積み上げてきた暮らしのなかで、たかだか一代で何かを変えるのはそう簡単ではない。

「無理に“地元の人”になろうとしなくていいと思うんですよ。自分たちは“よそもの”ですから。かといって卑屈になる必要もない。常々地元の人に教わる気持ちがあれば、色々と教えてくれますし、そのなかからお互いに芽生えてくることがあると思います」(綾子さん)

誇りを取り戻すーーよそものの移住者だからこそできることもある

オープン性は平戸のひとつの特徴かもしれない。前述したが、平戸はさまざまな文物が行き交った場所。よそ者が作った歴史も平戸の中にはたくさんある。よそものだからこそ、できることも多いはずだ。

「私たちのような外の人間からすれば、海もあって山もあって、食べものはおいしいし、古くから続く文化も含め、平戸はとても魅力的。郷土愛があるのに平戸の暮らしに自信を無くしている人たちも、別の視点を得れば “この暮らしって価値があるんだ”となるじゃないですか。
それぞれが面白い動きをして情報発信をしてつながれば、ここで育って外に出た人たちが“もう一度地元に戻りたいな”と考えるかもしれませんよね。そうなればいいなと思っています」(綾子さん)

「地域の誇りを取り戻したいですね。平戸の人たちに “平戸はいいところですね”と僕が言うと、 “何もなかよ”って言うんですよ」(佑介さん)

地元の人にとっては当たり前になってしまい、せっかく持っている素材を生かしきれていない。外から移住してきた吉田さん夫婦には、絶景と写る風景も、日常になってしまい価値を見出せずにいる。

「私たちが借りた家には離れがあるんですけど、そこから見える湾が本当に素晴らしい。私たちだけで独占してしまうのはもったいないと思い、ゲストハウスにしようと準備を進めています」(綾子さん)

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離れの窓から見える景色。根獅子の浜が一望でき、浜に打ち寄せる波音が聞こえる。こんな絶景が自宅から見られるなんて最高だろう

ゲストハウスは、上げ膳据え膳のようなおもてなしではなく、あえて最小限にとどめ、ある意味、“何もない”けど、素晴らしい景色を堪能してもらう、平戸の暮らしを見てもらう、そんなシンプルな形を目指しているそうだ。

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ゲストハウスの準備を進めている離れ

ゲストハウスは移住を検討している人と平戸の“ハブ”

「あと、平戸への移住に興味を持たれた方に気軽に来てほしいですね。現地はどんな暮らしなのかなとか、気軽に質問したいと思うんです。でも、いきなり平戸市に問い合わせるのは敷居が高いですよね。実際に住むかどうかはまだわからないのに自治体とつながるのは、お互いが構えちゃう。
そういうのではなくて、ふらっと立ち寄って、ここの暮らしを少し垣間見て、自分たちが知りたい情報だけを移住者である私たちから抜き取ってもらえたらいいと思うんです」(綾子さん)

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ごくシンプルな内装にする予定のゲストハウス。ハンモックが気持ちよさそうだ

移住は、土地の雰囲気や生活インフラ、地元の人たちの気質など、合う合わないが必ず出てくるもの。そこで、平戸のメリット、デメリット、リアルな暮らしぶりを実際に移住してきた吉田さん夫婦に聞けば、生の情報を得ることができる。そのように移住のモデルケースを見る場として、移住先候補を見比べる機会として、ゲストハウスを活用してほしいという思いも持っている。

移住希望者と平戸のつなぐ“ハブ”のような場所。そうした場が日本全国にできたら、旅行がてらに土地の暮らしを見ることができて、移住へのハードルがもっと下がるかもしれない。

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ゲストハウスには囲炉裏も設置


次回の最終回は、実際に住んでみて感じた平戸の暮らしやすさ、移住者だからこそわかる移住先を決める際のポイントについてまとめます。

vol.4に続く】

 

吉田さん夫婦が開業準備を進めているゲストハウス、長崎県の移住情報はこちらまで。

一棟貸しの古民家ゲストハウス「山彦舎」
2017年春季オープン予定
HP:https://yamahikosha.jimdo.com/
FB:https://www.facebook.com/yamahikosha2016
Instagram:https://www.instagram.com/yamahikosha2016/
ながさき移住ナビ

http://nagasaki-iju.jp/

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text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条


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