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大三島で人気の自家焙煎コーヒー店「オミシマコーヒー」、美しい瀬戸内海の景色とともに楽しめる絶好のカフェスポット!

移住者が暮らす今回の舞台は、愛媛県今治市。

取材に行ってみて驚いた。北関東出身の私としては四国になじみがなく、勝手にイメージで遠いと思っていたのだが、思った以上に東京からアクセスがよいのだ。松山空港までは東京・羽田空港から1時間20分ほど。愛媛近いじゃないか。

旅の目的地は今治市の大三島にある小さなカフェ「オミシマコーヒー焙煎所」。瀬戸内海を見渡せるカフェとして人気を博している。自然豊かなこの島で夢を実現したのは衛藤智康さん(48歳)、史代さん(47歳)夫婦だ。

しまなみ海道のなかでも”絶景の宝庫”と呼ばれる大三島だが、このオミシマコーヒー焙煎所は抜群の絶景スポットだ。瀬戸内の絶景を見ながら、焙煎士の智康さんが淹れるコーヒーを飲む時間はまさに至福のひととき。

そんな二人の移住ストーリーをひもといていこう。


九州出身の夫婦が東京から瀬戸内へ移住

cazual(以下、C) お二人の出身はどちらでしょうか?

史代さん(以下、史) 主人は北九州の出身です。私は大分の別府。東京に住んでいたのは10年くらいですね。

C 東京を離れたいと思った理由は?

 主人が急に「海の近くに住みたい」と言い出したんです(笑)。2011年の震災後はより強く言うようになったので、いま思えば震災がきっかけのひとつです。あと、東京で主人が独立のための資金を貯めていたんですけど、その仕事がうまくいかなくなって、リセットしたかったのもあるのかなと思います。

C 史代さんは、智康さんから「東京を離れたい」と言われたときはどうでしたか?

 私は東京の下町が好きだったので、正直、東京から離れたくなかったです。当時住んでいたのが葛飾区の下町で、すごく肌感が合うなーと思っていましたから。大三島とは全然環境が違いますね、緑も少ないですし。

それでまずは東京に近い熱海や伊豆あたりから移住先を探し始めて、だんだん東京から遠ざかっていった感じです。実際に探してわかりましたけど、地方に行けば行くほど物件は少ないですね。

C 空き家自体はあるけど、それが市場に出てこないと聞きます。

 どうやら仏壇がネックみたいです。空いているからと言って、勝手に片づけるわけにもいきませんから。田舎特有の兄弟や親族の関係もありますし。私たちが大三島に来たのは、空き家バンクのHPを通じて物件の下見に来たのが最初です。

C 大三島のどういうところに惹かれたんですか?

 主人が「住むのは海のほうがいい」ってずっと言ってまして。私は生まれが大分の別府で、海を見て育ったのでそんなに執着はなかったんですけどね。

C 島は、独特な環境だと思うのですけど、内陸ではなくて島を選んだ理由は?

 初めは小豆島にひかれていました。でもどうしても縁がなくて、そこで空き家バンクで見つかったのが大三島。もともと主人が「瀬戸内海いいな」と言っていたので、それで決めました。

ちょうどそのとき、2012年に地域おこし協力隊の募集があり、移住を考えているときだったので、あんまり深く考えずに応募しました。それで、私だけ今治市の地域おこし協力隊に入りました(編注:大三島は今治市の行政区域)。主人はコーヒーショップの準備を進めていきました。

C 大三島に移住されたのが2012年の春。ひとまず島に住んで、そこからコーヒーショップ用の物件を探し始めたんですか?

 そうです。最初はみかん倉庫だった物件で焙煎所をやっていて、住んだ物件も島の西側の集落でした。

地域おこし協力隊は3年の任期があるのですが、コーヒーショップを本格的にやろうと思い、1年で辞めさせていただきました。そのときはみかん倉庫を改修して、生豆を焙煎して豆売りだけをしていました。

一杯ずつていねいにドリップ

夫はコーヒーショップの準備 妻は地域おこし協力隊

C 地域おこし協力隊のときはどういう活動をされてました?

 地域の方のお手伝いをしながら、まずは地域のことを知るという感じでした。2年目からは何かしら自分で見つけて、生きていかなくちゃなりません。

C その1年間で、地元のことはわかりました?

 いや、地域おこし協力隊はどうしても行政の立場なので、今とは全然違いますね。行政のお仕事は、たとえば地域のお祭のお手伝いとか、そういうことをするので精いっぱいでしたから。地域おこし協力隊制度が始まったばかりだったので、行政の方も何をさせればいいのかわからない状態だったと思います。

C 地域おこし協力隊で働いていた時期は、智康さんはどんな活動をされていたのですか?

 みかん倉庫を少しずつ改築して、1年目の夏からイベントに出店しだしました。ちょっとずつ知っていただこうと思い、島内のイベントとか、今治市のイベントに出ていました。

いまの場所は島の東側ですけど、初めはこんなに大きなスペースでやるつもりはありませんでした。

築70年の古民家をカフェにリノベーション。店内のどこからでも海を眺めることができる

C 移住当初は智康さんがコーヒー豆を売り、史代さんが地域おこし協力隊をやっていたと。それで今のこちらの店舗とはどうやって出会ったんですか?

 移住2年目から地域の方とすごく仲よくなったんですよ。地域おこし協力隊を卒業し、行政の立場を外れてフリーの時間があったので、島の片づけの手伝いなどによく行くようになりました。それで島の方々と親しくなれたんです。そうしたら、たまたま仲よくなった方がこの物件を紹介してくださいました。

C いまの店舗のオープンはいつごろですか?

 2015年の4月です。物件を探したあとで1年かけて改修しました。

C 今の店舗はもともと築70年の古民家と聞きました。内装から外のデッキも改修されたのですか?

智康さん(以下、智) デッキは2016年に新しく改築しました。お客様がすごく喜んでくださります。秋から冬になると、目の前に生えている柑橘が色づいてくるので、すごくきれいです。あと花の季節はジャスミンの香りがしてきて、ここしか味わえない良さがありますね。

デッキからは瀬戸内海が一望できる

C そもそもコーヒーショップを始められたきっかけは何ですか?

 もともと私たち夫婦はコーヒー好きで、東京に住んでいたときからコーヒー屋さんを巡っていたんです。それで、北鎌倉の喫茶ミンカというお店に行ったときに「こういうお店がしたいな」と思ったのがいちばんのきっかけです。そのときはここまで実現するとは思ってなかったんですけどね。

島暮らしの魅力や大変だったこと

C 島の生活はどうですか?

 食べ物の味が全然違います。野菜から果物まで、水っぽさが全然なくて、味が濃い。今まで食べていたのはなんだったんだろうと思います。ここの食べ物の味を知るともう都会に帰れないような気がします。

C ほかに環境や生活の質の面でよかったことは?

 星が本当にきれい。満月の夜に月の道が海にパーっとできて、波の音が聞こえてきたり。そういうのは都会だと絶対に味わえないですよね。不便なこともありますけど、いいところもたくさんあります。

C 島暮らしで大変だったところは?

 思った以上に気候が激しいところですかね。寒かったら、東京であればビルやコンビニに入ったりしてしのげますけど、ここはないですから。大三島は本当に気温の差がはっきりしています。

C 瀬戸内なので、てっきり穏やかな気候なのかと思っていました。

 みなさんそうおっしゃいいます。穏やかで暖かいのは暖かいのですが、体が慣れるまでしんどかったです。

あと、主人は方言がまったくわからないみたいで、それがツラいって言っていたときもありました(笑)。私は別府出身で瀬戸内海まわりなので、まだ少しわかるんですけど。

C マイナスもあるけど、それよりプラスのほうが大きい?

 そうですね。でも、正直どうしても不便なときも多いです。携帯の充電が切れたときにすぐ入れるコンビニがないですし。当たり前なんですけどね。

島の方はご自身で野菜を作られていますけど、私たちはお店があるので畑はできません。なので、近くのスーパーに通うのですが車で15分ほどかかります。日曜はお休みで、夕方の6時で閉まっちゃいます。文句を言い出したらキリないですね(笑)。

C ネットショッピングも利用されますか?

 今はネットが充実しているのでよく使いますが、大三島だと離島料金になってしまうことがあります。想像していたよりも、実際に暮らしてみると、なかなか手に入らないことは多いです。

入り口へ続くアプローチ。田舎のおばあちゃん家に遊びに行くような気分になれる

大三島は移住者が増えている

C 移住してから、収入はどうですか?

 店を始めてからは収入はどうにかありますが、観光のオフシーズンはやっぱり下がります。でも、大三島は観光地なので、近くのほかの島より人は来ているみたいです。お店の客さんは、地元の方が3〜4割で、残りが観光の方ですね。外国の方は1割もいないくらいです。ゲストハウスだともう少し多いみたいですよ。

C 大三島は移住者同士のコミュニティはあるんですか?

智 移住者の方は今100人くらいいて、交流はけっこうあります。30代くらいの若い人が中心ですけど、60代以上の方もたくさんいます。大三島に温泉施設が3カ所あるので、そういう点も移住される方にとっては良いみたいです。みなさん、新規就農で農業を始める方が多いですね。

C 移住者同士で、「この地域を盛り上げよう」と思ってやってらっしゃることはありますか?

 私たちはまだ、自分たちの店で精いっぱいなんですけど、そう思われている方もたくさんいらっしゃいます。この近くで養蜂をされている方もそのひとりです。ただ、そういうことはまず自分の足元を固められていないとなかなかできません。

島の移住者は農家さんが多いんですけど、農家の方も忙しいので、そこまで手が回らないというのはあります。

今は建築家の伊東豊雄さんのプロジェクトがあるので、大山祇神社の参道周辺は盛り上がっていますね。もともと神社があって観光地だったところに伊東豊雄さんのプロジェクトがあるので、東京の方も知りやすい地域になったと思います。

自家焙煎されたコーヒー豆がずらり。豆以外にも大三島でできたハチミツや柑橘のジャムなども売られている

人とのつながりが心地よいから大三島にいる

C 東京から移住して6年ほどですが、今後もずっと大三島で暮らしますか?

 どうでしょうか。今は大三島にご縁があって暮らしていますが、土地というよりはここの人との繋がりが大事です。「親しくしている方たちがいるかぎりはここにいたい」とは思いますが、大三島じゃないといけないかはまだ言い切れないです。先々は変わるかもしれないですが、いまは人と離れたくないという気持ちが大きいですね。

C 土地への執着はないようですが、移住当初から「絶対にここで成功しなきゃ!」というのはさほど意識していなかったのでしょうか?

 そうですね。そこまで意識していません。なので、「よく来たな」って言われます(笑)。協力隊っていう入り口だったからかもしれませんけど、そこまでは考えていなかったです。私たちにとっては移住するってこと自体が目的として完結していたのかもしれません。移住しちゃえばなんとかなるだろうって。

C じゃあ今後もし良いご縁があれば、またどこかに移住するかもしれない?

 そうですね。まあ、またイチから改築する労力もあるかどうかわかりませんが(笑)。


店内に入ると存在感を放つ焙煎機に目が奪われる。この機械で焙煎士の智康さんがていねいに豆を煎っているのだ。そして一杯一杯ドリップしてコーヒーを入れてくれる。

そして、史代さんお手製のスイーツも絶品だ。

取材に訪れたときは、レモンのレアチーズケーキとパンナコッタをいただいたのだが、聞けば地元の材料をふんだんに使って作っているという。

「大三島で獲れたレモンを使っています。無農薬なので丸ごと召し上がっていただけます」(史代さん)

おだやかな甘さにレモンの爽快な酸味が合わさり、いくらでも食べられそうな素朴なスイーツだった。

オミシマコーヒー焙煎所には、おいしい自家焙煎のコーヒーに手作りスイーツ、ゆったりとした瀬戸内の風景、そして智康さん、史代さんが醸し出すリラックスした雰囲気がある。大三島の空気感を存分に味わえるスポットだ。

オミシマコーヒー焙煎所 詳細

愛媛の移住情報

愛媛県への移住に興味がある方は、愛媛ふるさと暮らし応援センターが運営する「えひめ移住支援ポータルサイト e移住ネット」をチェック。愛媛県の紹介や住まい、仕事に関するサポート情報、移住者インタビュー、子育て支援、移住までの流れなど、移住に関するさまざまな情報が豊富に掲載されているので参考になるはず。

「えひめ移住支援ポータルサイト e移住ネット」https://www.e-iju.net/

取材・文/george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の33歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。5年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。現在は、アウトドを主軸にしながらも地方移住などローカルトピックにも積極的に関わっている。


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