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【復興3.11】森と海と子どもが生み出す地方創生のつぼみ@宮城県石巻/後編

2011年3月11日に起きた東日本大震災。東北地方は大きな打撃を受けたが、着実に復興への道を歩んでいる。そこで、自然や人、その街が持っている地域資源を使い、未来へ向かって希望を生み出している、ある施設を紹介したいと思う。
(※本記事は2017年に公開した記事の再掲載です。掲載されているデータなどは取材当時のものです。ご了承ください)


【前編はこちら

「モリウミアス」が提供するのは森と海に寄り添う地元の暮らし

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宮城県石巻市雄勝町に、自然から学び、森と海と田舎暮らしを体験できる複合体験施設「MORIUMIUS」(モリウミアス)はある。廃校を活用したこの施設は、森や海という地域資源を生かし、小さな集落を盛り上げている、いま注目の地方活性プロジェクトだ。「【宮城県石巻市雄勝町】森と海が生み出す地方創生のつぼみ/後編」では、雄勝町の課題や、プロジェクトが地域にもたらしている効果についてまとめることにする。

少子高齢化は震災以前からあった雄勝町の課題

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世界的建築家の隈研吾氏が、校舎の改築プランを考えてくれた。開放感のある造りが特徴だ。これも自然をより感じるための工夫だ。

廃校となった築100年近い旧桑浜小学校をリノベーションしてモリウミアスは生まれた。気をつけないといけないのが、震災を機に廃校になったわけではないということ。

震災以前から少子高齢化が進んでいて、2002年に廃校になった。人口減少、少子高齢化は雄勝町の長年の課題であり、震災によって、深刻さが増した。

そんな状況で誕生した「モリウミアス」は、地域を盛り立てる希望の星となりつつある。

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2段ベッドが設置された、子どもたちが寝泊まりする大部屋。さまざまなグループが一緒に生活をする

「子どもたちのためなら」とひと肌脱ぐ地元の人々

子どもたちを滞在させて、さまざまな体験を提供する施設なので、直接的な人口増には寄与していない。しかし、

廃校になった元小学校に子どもたちが集まっているーー

このことが地元の人たちの意識を変えていると言う。「子どもたちの姿を見ると、町に活気が出ている気がする」「モリウミアスのボイラーから立ちのぼる煙を見ると、子どもたちが来ているんだとわかってうれしい」などといった声が寄せられている。

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また、校庭で年に一度、旧桑浜小学校卒業生が一堂に会する大運動会を開いているが、そこにはモリウミアスから子どもたちも参加している。そこで、出会った都会の子どもたちから、雄勝のおじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれるなど、その場きりではなく、継続して親しく交流するケースも出てきているのだ。

触れ合う機会がなくなっていた子どもたちとの交流は、町の人々に対してもポジティブな影響を与えている。体験プログラムでは先生役を地元の方にお願いしているが、「恥ずかしいけど子どもたちのためなら」と引き受けてくれた人も一人や二人ではないそうだ。

地域経済へもきちんと貢献する

オープンして1年半が経ち「子どもたちのために」と地元の方々も非常に協力的になってきている。

あるとき、「たくさん獲れたから、子どもたちに食べさせてやって」とバケツいっぱいのホタテを持ってきた漁師さんがいた。そうした好意はありがたいが、モリウミアスは地域経済を回すという前提もあるので、対価をお支払いしたそうだ。すべては、モリウミアスというプロジェクトを長く持続させるため。

雄勝で食材を手配し、雄勝の店にシーツ類のクリーニングをお願いし、雄勝の人にプログラムの先生役をお願いし、スタッフも地元で雇用する。できるかぎり、地域でお金がまわるような仕組み作りも積極的に行なっている。

子どもたちとの交流という心のハリだけではなく、きちんと経済的にも地域に貢献し、関わる人みんなが幸せにならなければ、このプロジェクトは持続していかない。短期ではなく長期的に雄勝と関わるにはどうすればいいのかをモリウミアスは考えている。

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モリウミアスのスタッフのみなさん

自然と寄り添う暮らしが切り開く雄勝の未来

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施設の裏山には鬱蒼とした林が。この山道を進んでいくと、絶景が広がる

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裏山を登ると雄勝の浜を一望できる

雄勝が持っている海や山といった自然資源を活用し、雄勝の自然と共存した暮らしを体験させるというコンセプトのもと、子どもと地元の人がつながり、交流人口を増やしている。定住人口が増えているわけではないが、モリウミアスによって生まれた縁により、雄勝のことを第2のふるさととして心にとめてくれる子どもたちが生まれている。

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震災によって、4,300人が暮らしていた雄勝町は、人口が1,000人以下にまで減少してしまった。震災は不幸なできごとであったが、震災をきっかけに生まれた子どもたちと雄勝の縁は、町の未来でもある。

子どもたちは雄勝を通してサスティナブルに生きることを学び、雄勝は子どもたちを通して町の可能性を広げていく。新しい教育の形、新しい地域コミュニティづくりのあり方が、宮城県石巻市雄勝町という地方の小さな集落で育ちつつある。

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「MORIUMIUS」INFO

所在地:〒986-1313 宮城県石巻市雄勝町桑浜字桑浜60
アクセス
車の場合:東北自動車道(下り)仙台港北I.C→三陸自動車道 河北I.C 東京から約6時間
電車・バスの場合:東北新幹線(東京-仙台)→高速バス(仙台駅-石巻) 東京から約3.5時間
予約は「MORIUMIUS」のHPから

text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条

【追記】
本記事は2017年2月に公開された記事です。


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