× CLOSE

【長崎県平戸市移住】移住者だけではなく地元も一緒に盛り上がるのが理想/vol.4

平戸でのコミュニティづくりについてまとめたvol.3の記事はこちら

20170313_tokoro_rikitake01

東日本大震災を機に働き方や暮らしを見直し、映像ディレクターとして働いていた東京を離れ、ふるさとである長崎県平戸市にUターン移住した力武秀樹(りきたけ・ひでき)さん(33歳)。2012年4月に平戸に戻って2014年3月にカフェ『3rdBASEcafe』を開き、現在では行政との町づくりプロジェクトにも少しだけ関わっています。最終回となる今回は、移住者だからこそわかる移住者コミュニティについて話を聞きました。

移住者コミュニティと地元の融合でもっとよくなる

「密に付き合っているのは、移住者のほうが多いかもしれないですね。僕よりちょっと上の30代中盤~後半くらいがいちばん多いです」

平戸市はここ2〜3年で移住者が増えていて、力武さんの周りも起業に向けて準備をしている段階の方が多い。

「ゲストハウスを始める方もいるし、平戸で手作りの食用油を作ろうとしている人もいます。あとは10年以上前に長野から来て塩づくりをされている方がいて、その人が移住者たちのお兄さん的存在です」

ゆるやかに移住者同士のネットワークはできているが、そこに地元の方が絡む機会はまだまだ少ないという。

「僕は一度、平戸の外に出てよかったと思う。視野が広がるので絶対アリだと思います。でも、逆に僕からしたらずっと平戸に残って地元で暮らしていた人は地域にとって貴重だと思うんです。けど、そこの融合が全然うまくいってない」

Uターン移住者が、IターンやJターンで来た移住者と地元をつなぐ役割を担えるのかもしれない。

20170313_tokoro_rikitake04_003

力武さんが開いたカフェ『3rdBASEcafe』のウッドテラス。オーシャンビューの開放的な雰囲気が気持ちよい

地元の仲間が“平戸はつまらない” それがなんだか悔しくて

「僕は高校を卒業して東京に出ました。当時は、平戸って何もなくて退屈だと思っていた。上京して、東京の家に一歩足を踏み入れたとき、しばらく笑顔が止まらなかったんです。自由だ! って思って。ホームシックにもならなかったし、平戸にもずいぶん帰りませんでした」

力武さんは、東日本大震災を機に東京の仲間たちが千葉に移住したり、鎌倉に移住したりするのを見て、自身の暮らしを見つめ直すようになった。移住先を決めかねているときに、平戸に戻ろうと思ったきっかけがある。

「平戸とも当時の仲間とも疎遠になっていたけど、震災後に地元に帰って、みんなとしゃべる機会がありました」

平戸を離れている身としては、地元に残って盛り立ててくれている仲間に対して感謝の気持ちを持っていた。しかし、

「地元の仲間が“平戸はつまらない”って口々に言うんです。みんな30歳手前ですよ? 20歳の子が言っているならわかるけど、いい歳してそんなこと言うなら、僕としては“楽しいことを自分で作ればいいじゃないか!”と。つまらないって言うのが、すごく悔しいと感じたんです。だったら、自分にできることが何かあるんじゃないかと思って。それがUターンを決めたいちばんの決め手かもしれないですね」

平戸を内側から見続けてきた地元の目と、外から平戸を眺められる移住者の目、町を元気にするには、この2つの視点は欠かせない。おそらく、どちらか一方に偏ってはいけないのだと思う。

20170313_tokoro_rikitake04_005

カフェでは海を見ながらドリンクも楽しめる

移住先はどういう視点で選べばいいの?

町づくりやコミュニティビジネスに関心の高い力武さんは、地方創生で注目を集める街を積極的に訪れている。4年間の移住経験も踏まえて、移住先の選び方についてアドバイスを聞いてみた。

「コミュニティができあがっている地域に行くのか、まだできあがっていない地域に行くのかで全然違うと思います。できあがっている地域はすぐに手厚く歓迎してくれて、行った初日の夜には知り合いが30人くらいできたりする。スタートがラクなので僕もうらやましいなと思う反面、僕としては面白さは感じないかなという気がします」

イチから作っていく楽しさがないからだ。若い人たち同士のつながりが薄かった平戸のコミュニティハブとなるようにと願い、力武さんは『3rdBASEcafe』を立ち上げた。

「ここ2、3年で平戸にも小さいながらコミュニティができてきました。当初は“手伝って”と言える仲間はひとりもいなかったけど、いまでは“ゲストハウスの壁塗りを手伝って”と言われて行くと、15人くらいが集まるようになっています」

このような手伝い募集だったり、アートイベントだったり、カフェを軸にいろいろな交流が生まれて、活動の輪が広がってきている。

20170313_tokoro_rikitake04_001

カフェを軸にして、さまざまな出会い、つながりが生まれている

イケてるグループだけで盛り上がっている街もある

移住コミュニティが活発な地域に行って感じたことを教えてもらった。地方創生の成功事例としてメディアでもさかんに取り上げられているとある町に行ったものの、力武さんはあまり好きになれなかった。

「確かに町に勢いがあって成功しているんですけど、なんというか、ちょっとおしゃれ感が強すぎた。僕としては地元のおじいちゃんとお酒を飲み交わすくらいのラフな雰囲気が好きなんだなってわかりました」

その町は、あまりに移住者が増えすぎてしまって、地元の方よりも移住者コミュニティだけが先行してしまっている印象を受けたそうだ。

「学校の教室で例えるとイケてるグループだけで盛り上がってるという印象。一般的な地方の場合、移住者は絶対的に少ないので、地元の方々と協力しないとうまくいかない。でも移住者がたくさんいる地域だと地元の人を巻き込まなくても、そのコミュニティ自体がでかいので、そのなかですべてがより円滑に進んでいくわけです。ある意味、うらやましい部分でもあります。一見、街は盛り上がっているように見えますけど、移住者と地元の人の温度差を感じました」

20170313_tokoro_rikitake02_007

力武さんは移住を考え始めた当初は趣味の釣りを基点に移住先を考えた。その後、町おこしに携わりたいと地元・平戸を選んだ

のんびりとした田舎暮らしがしたいのか、町づくりに積極的に関わってゼロから作り上げていきたいのか、地方でファッショナブルに暮らしたいのか、アウトドアのアクティビティを堪能したいのか、自分が移住に求めるものはどういうものか、しっかり見極めることが大事だ。すでに成功している地域、徐々に盛り上がりつつある地域、まだまだこれからの地域、どんな地域が肌に合うか、実際に訪れてみないとわからない。

「どの地域にも面白いキーマンになる人がいるので、移住したらそこに行くのが何をするのにもいいと思います。いろいろな情報も集まっているし、人につないでくれたりもしますから」

また、地域に溶け込むときにはフットワークの軽さもポイントだ。お誘いを受けたら、まずは面白がってやってみる、そういう姿勢は地域になじむスピードを速めてくれるだろう。

Uターン移住者の力武さんが思う平戸の特徴は?

20170222_tokoro_hirado_yoshida04_005

いろいろな地域を見たなかで、平戸の特徴はなにかと尋ねると、「平戸は広いんですよね」と答えが返ってきた。

「僕が住む田平地区は、平戸の中で盛り上がっていると話題になることもありますが、小さいエリアです。市内でも地区ごとに性格が違うので、平戸をひとくくりに盛り上げることは不可能だと思う。
僕に関して言えば、いま現在は主に田平地区に特化して活動をしています。はじめのうちは意識していなかったですが、今はここに若者が集まる仕組みを集約したいと思っています。とりあえず目指すものは、さっきの例えでいうとイケてる人たちをカフェに集めること。言っていることが矛盾してしまうんですけど、まずは人を集めるために話題になることが大事かなと思っています」

平戸の外に出ることで、ふるさとのよさに気づくことはよくある。そして、得てして中にいる人たちは、外からの評価に影響されやすい。「田平のカフェに感度が高い人が集まっているらしい」「面白いイベントをやっているらしい」と話題になれば、地元からも一目置かれるようになるだろう。そうなれば、何もなくてつまらないと思っていた地元の人の意識も変わっていくはずだ。

20170313_tokoro_rikitake04_006

写真展などのイベントを開くと、平戸市内外、長崎県外からもお客さんが訪れるようになった

「どういう人が今の平戸に欲しいかと言われれば、僕はデザインができる人がほしいです」

平戸に魅力はたくさんあり、力武さんはそれを見つけることができる。次は、それを対外的にも地元に対しても、どう伝えていくのかが問題となる。

「インターネットを使えば、SNSなど、お金かけなくても発信をすることができます。あとは上手な見せ方をするためにデザイン面での工夫が必要だと思います。僕は顔合わせて仕事をするのが好きなので、デザインの分野で平戸に来て活動してくれる人がいたら最高ですね」

++++++++++++++++++++++++++++++++

全4回にわたって長崎県平戸市にUターン移住した力武さんの移住ストーリーを紹介しました。

移住に至った経緯、移住後の生活、どう平戸を盛り上げているのかといったコミュニティづくりのこと、移住者で活気づいているほかの街のこと、さまざまなことを教えてくれた力武さん。

カフェを軸にして、時には釣りをしたり、時には行政の街づくりプロジェクトに参加したり、時にはキャンプ場で飲み明かしたり、平戸の暮らしを楽しみながら街との関わりを深くしています。

今回、力武さんを取材して感じたのは、街が変わっていくのを周りで傍観するのか、街が変化していく渦中に身を置いて動かしていくのか、街に対して移住者としてどういうスタンスを取るのかということ。移住を考えるときには、自身の暮らしだけではなく、その街とどう関わっていくのかも考える必要があるのです。

とはいえ、大きな変革を起こそうというのではなく、あくまで自分が心地よいこと、そして自分の周りの人たちが心地よいこと、地に足のついた小さな範囲から考えていくことがポイントなようです。

 

力武さんが開いたカフェ、長崎県の移住情報はこちらまで。

『3rdBASEcafe』
フェイスブック:https://www.facebook.com/thirdbasecafe/
ながさき移住ナビ

http://nagasaki-iju.jp/

力武さんの連載記事はこちら

【長崎県平戸市移住】釣り好きの青年が3.11を機に地元を盛り上げたいとUターン/vol.1
【長崎県平戸市移住】若者が集まるハブを目指して海沿いにカフェをオープン/vol.2
【長崎県平戸市】若者向けに音楽フェスを企画。いずれは自然も生かしたい/vol.3
【長崎県平戸市移住】移住者だけではなく地元も一緒に盛り上がるのが理想/vol.4

長崎県の移住にまつわる記事はこちら

キャンピングカーで移住先探しができるってよ in 長崎県 軽キャン大解剖!
【長崎県平戸市 移住ライフvol.1】きっかけはUターンしていた友人 旅行3日目で移住を決意
【長崎県平戸市 移住ライフvol.2】ガイドにわな猟、農業…収入半減も暮らしは豊かに
【長崎県平戸市 移住ライフvol.3】移住者は自分が変えなきゃと強く思いすぎないこと
【長崎県平戸市 移住ライフvol.4】本土と橋続きの平戸島はアウトドア好きの移住者にぴったり

text:george

【PROFILE/george】

茨城県東海村出身の32歳。インテリア雑誌、週刊誌、書籍、ムックの編集を経て、現在Webディレクター。4年前の朝霧ジャムに行って以来、アウトドアにハマる。テントはMSRのエリクサー3、タープはZEROGRAM。車を持っていないので、キャンプに行くときは知人の車に相乗りが常。なので、基本の装備は「軽くコンパクトに、友人の負担にならないこと」が信条


  • この記事が気に入ったらcazual(カズアル)に いいね! / フォロー しよう

  • 漏れない”超精密タンクキャップ”!
  • おすすめ!しょうゆ香るアウトドアソース

クラウドファンディングサイト「Fannova」

クラウドファンディングサイト「Fannova」

L-Breath

新着記事

PAGE TOP
COPYRIGHT © SHUFU TO SEIKATSU SHA CO.,LTD. All rights reserved.