狩猟解禁！ ジビエとして注目を集めるエゾシカ しかし実情は…
狩猟の季節がやってきました。狩猟解禁時にしか味わえない滋味深いジビエは、近年では、秋〜冬の定番グルメとしてより身近になりました。その王道が、北海道に生息するエゾシカです。
しかし、一方で個体数が増え続け、農産物への被害や森林の樹皮を食い荒らすなどの被害も甚大になり現在は有害鳥獣になっています。市街地にも多く出没するようになり、住民生活にも影響が出ているとか。
ハントした害獣のエゾシカをジビエに有効活用し地元の名物に
北海道登別市では被害を減らそうと、民間企業と猟友会が連携して狩猟を行い、エゾシカの大規模な捕獲作戦を行っています。その中心人物が、北海道猟友会室蘭支部長の伊奈信也さん（写真内右）。本業は不動産業でありながら、捕獲したエゾシカを安全で美味しいジビエとして有効活用して登別名物にしようと、捕獲〜処理、卸まで一貫して手がける事業を展開しています。
山に分け入り、獲物を狩るベテラン猟師の伊奈信也さん（右）と白川徹さん（左）
猟師歴48年の伊奈さんのパートナーは、元自衛官で狩猟歴25年の白川徹さん。休日になると二人で山に入り、連携しながら、年間約200頭のシカをハントしています。それらの命を無駄にしないためには、どうすれば良いか？ 考えた末に、始めたのがエゾシカ肉の流通でした。
ベテラン猟師の熟練ワザ”ネックショット”で仕留める
獣害駆除のハントでありながら、美味しいエゾシカ肉の流通のために最大限の注意を払い、リラックスした状態でシカを仕留めます。傷を最小限に抑えるために、必ずネックショットで。それはベテランだからこそなせる技。
走り回ったシカは、肉に血が回るので、質が落ちるのだといいます。シカを苦しませることなく絶命させた後は、自社の食肉処理施設でスピーディーに処理。「フレッシュで、良質なシカ肉を提供するために、シカの絶命後30分以内に施設への搬入、処理します。そうすることで、生臭さが消え、シカ本来の旨味を堪能してもらうことができるのです」と伊奈さんは話します。
冷凍車を改造した特殊車両も所有。搬入まで時間を要する時は、この冷凍車で処理を行います。冷蔵機能はもちろん、獲物をつるすハンガー、熱湯殺菌のためのボイラーや流しを完備するという徹底ぶりで、一年中安全で安定したシカ肉の供給を可能に。処理後は、モモ、ロース、ヒレなどに切り分けた肉を、数日間熟成させて真空パック。その後、急速冷凍して出荷されます。
現在は、北海道を中心に、東京でも一部に供給され、エゾシカ料理を味わうことができるそう。
「のぼりべつエゾシカの缶詰」〜害獣が一転して北海道登別の名物に〜
また、一般に広くシカ肉の美味しさを知ってもらおうと発売されたのが、登別ブランド推奨品にも選ばれた「のぼりべつエゾシカの缶詰」。カレー煮、大和煮、味噌煮（１ダース24缶入から販売。1缶価格486円110g、648円160g）の３タイプの味が用意されています。登別市内では、道の駅、土産物店などで販売されています。
「シカ肉は、低脂質、高タンパクで低カロリーと、健康や美容に良いヘルシーフード」と伊奈さん。鉄分やビタミンB2も豊富で、女性には特におすすめとか。ちなみに筆者がいただいたのはカレー煮。シカ肉は柔らかく、カレー味と好相性でご飯もすすみました！ ジビエ入門として、食してみたい逸品かも。
【問い合わせ】
（株）伊奈不動産エゾシカ活用事業部
住所：北海道登別市中央町1-3-5
tel:0143-85-3053
photo:秋田大輔
【PROFILE／秋田大輔】
写真家。冒険とエレガンス、世界中の優れたライフタイルを撮影し雑誌、広告、写真展などで幅広く活躍。
サイト www.daisukeakita.com
text:ナイキミキ
【PROFILE／ナイキミキ】
ナイキミキ＝ジャングル・ジャパン主宰。
京都を拠点に、媒体の企画編集〜取材、執筆、コーディネィトを行う。近頃は、地方を軸足にコンテンツマーケティング、イベントの企画、運営、ブランディングなども行う。専門分野はファッション、伝統工芸、地場産業、旅。
サイト http://jangle-japan.strikingly.com
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